学校にはなじめないけれど、青春がしたいんだよ!

教育ジャーナリスト・おおたとしまささんのブログです!

https://ameblo.jp/toshimasaota/entry-12760538325.html

甲子園で優勝した仙台育英の須江監督の優勝インタビューが話題になっていますね。

「新型コロナウイルスに翻弄されてきた3年生にどんな言葉をかけたいですか」というインタビュワーの質問に次のように答えました。

「入学どころか、たぶんおそらく中学校の卒業式もちゃんとできなくて。高校生活っていうのは、僕たち大人が過ごしてきた高校生活とは全く違うんです。青春って、すごく密なので。(中略)本当に、すべての高校生の努力のたまものが、ただただ最後、僕たちがここに立ったというだけなので、ぜひ全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います」

まさに全国の高校生を代表する晴れの舞台で、この監督が、全国の高校生たちの心の叫びを代弁してくれました。高校球児だけではなく、全国の高校生たちの想いを代弁してくれたのだと思います。

これ、動画でご覧になりました?

監督の佇まいが素晴らしいと思いませんでしたか? 終始、涙は流しているんですよ。でも、優しくて落ち着いた口調は変わらないです。感情に押し流されず、伝えるべきことを真摯に伝える姿勢に、私は胸を打たれました。こんなふうな話し方ができる大人に自分もなりたいなと思いました。

「誠実な大人が、信念をもって、真剣に何かを伝えようとしているときは、こういう話し方になるんだよ」と、全国の子どもたちにこのインタビューの動画を見せたい気分です。

こういうスピーチを見ると、聴衆を変えてやろうとか、感動させようとか、自分を印象づけようとか、そういう目的でテクニックてんこ盛りで行われるスピーチとの違いがわかりますよね。妙に抑揚をつけて煽ったり、なんだか芝居じみていたり、やたらと盛っていたり、そういう話し方をする大人はたいていろくなもんじゃないから、話半分か三分の一くらいで聞かなきゃダメだよと子どもたちに伝えたいと思います。

監督が言うとおり、高校3年間、ずっとコロナ禍です。文化祭のあとの打ち上げだとか、負けた試合のあとのご飯だとか、お友達の家でダラダラ朝までだべるとか、そういうのがぜんぶできなくて。それどころか、お昼休みも黙食だとか言われて、宿泊研修や合宿は中止されて。青春が犠牲にされてきました。

ところで、「青春」ってなんでしょうか?

8月17日に『不登校でも学べる』という新刊が集英社新書から出たのですが、そこに、東京の飯田橋にあるビーンズという塾が出てきます。生徒の多くは不登校または不登校を経験した子どもたちです。

その塾では、子どもたちの自立のためには青春体験が不可欠だと考えて、青春体験を味わうことを教育の一部として組み込んでいました。ビーンズではさらに、「青春」を「ゆるい青春」と「熱い青春」の2種類に分けています。

ゆるい青春ってイメージできます?

たとえば放課後の教室で友人とダラダラおしゃべりするようなことです。

熱い青春はわかります?

たとえば甲子園を目指して仲間と厳しい練習をこなすみたいなことです。

この2つを十分に謳歌することで、子どもたちは大人の手を少しずつ離れて、自力で社会とかかわる自信と勇気を得るのだとビーンズのスタッフは言います。なんとなくわかりますよね。ですからビーンズでは、学校に行けていない子どもたちにも青春を味わう機会をもてるような工夫をさまざまにしています。

学習塾であるビーンズで「青春」に注目したのにはきっかけがありました。学校に行けなくなっていた中学生が、ビーンズでプレゼン大会を行ったときに「学校にはなじめないけれど、要するにさ、僕たちは青春がしたいんだよ!」と叫んで、「そうだよね!」とみんなが共感したんだそうです。

これもさっきの監督の言葉に負けず劣らずの名台詞ですよね。いま、中学生の7〜8人に1人が不登校または不登校傾向にあるとする調査結果もあります。青春というと、どうしても学校が舞台になることが多いのですが、学校に行かなくても密な青春ができる世の中だったら、学校に行かなくても子どもたちはそれぞれに自立していけるのだと思います。

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